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今回は犬や猫の年齢についてのご質問ですが、いつも書いておりますように、犬や猫の社会も、食生活の安定化、獣医学の向上、飼い主さんの意識の向上などにより、人間社会と同じく長寿高齢化が進んでおります。
一昔前は七~八歳が平均寿命と言われておりましたが、今では少なくとも十二~十三歳までは生かしましょうと言われています。
時代により年齢換算は異なってくると思いますが、現在では次のような簡易換算が代表的です。

◎小・中型犬・猫の場合
一年で十五歳’二年で二十四歳、三年目からは一年につき四歳ずつ歳をとっていきます。
三年目からの計算のしかたは
24+{年数-2年)×4}

◎大型犬の場合
一年で十二歳、二年目からは一年につき七歳ずつ歳をとっていきます。
二年目からの計算のしかたは
12+{年数-1年)×7

年数 小・中型犬、猫 大型犬
1年 15歳 12歳
2年 24歳 19歳
3年 28歳 26歳
5年 36歳 40歳
7年 44歳 54歳
9年 52歳 68歳
11年 60歳 82歳
13年 68歳 96歳
15年 76歳 110歳

 

では年齢の変化にあわせて飼い主さんが気をつけることを、大雑把ですが考えてみましょう。

まず誕生から三ケ月位の間には、犬も猫も駆虫とそれぞれの病気の予防のためのワクチン接種を行う必要があります。またその頃に、トイレや人間との共同生活のためのしつけ、社会化を考えなければなりません。

三ヶ月を過ぎると、犬は狂犬病の予防注射と登録が必要です。
そして六ケ月を越えた頃には、犬・猫とも子犬・子猫を産ませる考えがなければ、避妊・去勢を考えなければなりません。
避妊・去勢をすることで雌雄とも、特有の病気を未然に防ぐことができるほか、なわ張り意識、攻撃行動、むだ吠えなどの性に関する異常行動を抑制することができます。
一歳を過ぎれば年一回の狂犬病予防注射を含むワクチン接種をしてあげて欲しいものです。フィラリア症の予防も、産まれた年から毎年行って下さい。
犬や猫たちも、中年を過ぎますと私たち人間と同じように’過食’過肥から糖尿病、心臓病など生活習慣病が見られるようになります。人間同様、規則正しく摂生に努めることが必要なようです。
そして老後。これも人間社会と同じように癌、腎臓病、心臓病へ痴呆などの病気が動物社会でも問題となっています。早期発見、早期治療が望ましいのですが、 ではどのように早期発見をするのでしょうか。

それは、物言わぬ動物たちをよく観察し’触ってみて’排尿、排便の状態を見て、いつもと違った所がないかどうか、犬や猫が発しているサインを、いち早く気付いてあげることが早期発見の最良の方法だと思います。また、定期的にかかりつけの動物病院で健康診断を受け、変わった所、悪い所がないかチェックしてもらうのも一つの方法だと思います。

物言わぬ可愛い家族の一員と、長く仲良く暮らしていきたいものですね。

今回のご質問は、我々動物に関係する人間にとっては、とても大切な事であり、なおかつ今後益々深刻な問題となってくるものと思います。

お答えを先に申し上げますと、残念ながら現時点では、その犬が寿命を全うするまで面倒を見てくれる公的機関はありません。トピックスとして、善意で面倒を見てくださる方がいるなど、マスコミ等で時々見ることはありますがまれです。また退役した盲導犬を、ボランティア活動で面倒をみておられるグループもありますが、これもほんの一部に過ぎません。

愛犬との二人三脚の生活に終止符を打たねばならない。後髪を引かれるような思いでおられることと思います。
予算が十分にある方は、ペットシッターなど、預かりを職業とされている方と長期の契約をされて、時々会いたいときに会いに行っておられる方もいらっしゃいます。またつい先日も、独居老人の方が、自分が亡くなったときは遺産を総て、この犬のために使ってくれと言い残してお亡くなりになられましたが、法定相談人がおられて遺産は私のものだと、係争中であるとの記事を読んだこともあります。

これらの記事を読むにつれ欧米での動物、いわゆるペットの待遇は、日本と違いとても手厚い保護を受けているように思います。
先刻の話とは反対に、多くの方が全財産をペットに遺産相続をさせているとか、伴侶動物のいざという時のために、その動物の名前で預金もできているとか。またボランティアが、飼い主のいない犬や描、捨てられた犬や猫をシェルターという施設で面倒を見、しつけをして里親を捜し、貰っていただくという活動がなされています。その一環として老齢犬をお世話している所もあるようです。もちろん無料です。その費用は募金、献金にてまかなっておられるようです。
欧米は社会貢献、ボランティアには、こぞって資金提供をしたり労働力の提供をしたり、日本の事情とは少し違うようです。日本も早くそういう気運が熟成されるとよいと思います。

私の病院でも五十~六十代の方は時々「もうこの子で終わりだね。飼いたいけど私の方が先に逝っちゃうから」とお話されます。
年をとってからの動物との生活は、犬や猫をはじめペット動物の世話をすることで規則正しい生活ができたり、その動物を介して人とのつながりも広がります。また愛情を与えると、ちゃんと嬉しそうに答えてくれ心を和ませてくれます。こんな可愛い動物たちとの生活を断念せねばならないというのはとても残念なことです。
「新しい伴侶動物はもっとあなたに生きる力を与えてくれますよ。思い切ってチャレンジしてみませんか」と言いたいのですが、もし万が一のことを考えた場合、おすすめする勇気がでません。

これから私も含め団塊の世代の方たちもそういう年齢に達します。
この間題を皆さまどう考えられますでしょうか。反対に私の方から皆さまにご意見、アドバイスをいただきたいと思います。そして機会がありましたら意見交換できるといいですね。ご意見お待ちしております。

一つの朗報として、最近、獣医師とボランティアがこの問題を考え、動物を飼っておられるお年寄りの方たちへの支援をしようという団体ができました。
その団体は「VESENA」といい、お年寄りの飼い主さんをサポートしようと動き始めています。
>>VESENAホームページ

永久歯が抜けてしまった。人間ではすぐに差し歯や入れ歯、つまり義歯で対応しますが犬の場合は、ショードッグのように外観上必要という犬以外義歯は使われません。 なぜならば、義歯を使っても食事をするとすぐはずれてしまうなど、機能的に無理があるからです。

それでは犬の歯科について少し勉強してみましょう。

犬は生後三週位から乳歯が生えはじめ、十週前後で全部生えそろいます(二十八本)。その乳歯は四~六ヶ月前後ですべて永久歯に生えかわります。が、うまく生えかわらず、歯周病の原因となっていることもあります。

その永久歯は上下六本ずつの切歯(前歯)、上下二本ずつの犬歯、そして上下八本づつの前臼歯、上四本下六本の後臼歯と、計四十二本の歯から構成されてます。(ちなみに猫の永久歯は三十本です)

ではそれらの歯はどのような働きをしているのでしょうか?

切歯は獲物をとらえたり噛んだり、噛み切ったりする。犬歯は同じくとらえたり噛んだり、引きさいたりする。前臼歯は口に入れた食物を切ったり、すりつぶす。後臼歯は口に入れた食物をすりつぶす。等々の働きをしています。

しかし野生で生活していた時代と違い現代は、ドッグフード等、噛んだり、咀嚼したりしないですむ食物が多く与えられるため、ほとんど丸のみ状態の犬が多く見られます。もちろん一粒一粒吟味しながら食べる犬もいますが。

食べ終わった後、口の中は食べかすが歯と歯の間に残り、そこに口の中の最近が関与し歯垢ができます。その歯垢はそのまま放置しておきますと、唾液中のリンやカルシウム等がくっつき石灰化し、歯と歯ぐきの間に歯石ができてきます。そしてその歯石をそのまま放置しておきますと、歯のまわりの歯肉や歯槽骨まで炎症がおこり、歯周病をおこすことになります。この歯周病は、歯が痛い、抜けてしまう等の他に、歯周病に関与している細菌が、血管やリンパ管を通って全身に行き、心臓病や肝臓病をひきおこすともいわれています。

ではこのような歯周病にならないためにはどうすればよいでしょうか。

固いエサを与える、歯が丈夫になる、きれいになると表示されているおやつやオモチャを与える等色々な方法がありますが、最も有効な方法は歯みがきだそうです。これは小さい頃からやっていると、何の苦もなく習慣としてできるのですが、大人になってからでは時間をかけてやらないとむずかしいかも知れません。最初は口を触ることから始め、痛くない、怖くないことを知らせます。できたらごほうびをあげ次は唇をめくります。そして指を口の中に入れます。それができたらガーゼを指にまいて水や肉汁で十分湿らせ歯の表面をこすります。
それもできれば歯ブラシを使うというように、少しずつ根気よくやってみて下さい。

このように最近では、犬にとっても『歯は命』と言われてきています。歯の手入れをよくしてあげ健康な生活を維持してあげて下さい。

バニラちゃんとミルクちゃん、仲良くしていますでしょうか?
最近は犬と猫を一緒にお飼いになっておられるご家庭がたくさんあり、昔なら「仲良し家族」とでも写真入りで新聞に載ったかもしれませんね。

さて今回は犬や猫の体温調節についてのご質問ですが、我々人間や犬も猫も恒温動物に属します。
恒温動物は、常に外界温や熱産生とは無関係に、体温を一定に保ち生活しています。 それでも酷寒で保温の術がなければ凍死したり、酷暑で放熱、冷却の術がなければ熱射病などで死んだりします。

まず犬や猫は、我々の衣替えと同じく、春、秋に換毛をし、夏冬の暑さ寒さに対応します。
しかし人工的な冷暖房設備が整ってきた現在では、動物たちも四季を体感できなくなり、季節を問わず脱毛がおきているようです。 これから暑い夏を迎えます。この暑い夏を動物たちはいかに乗り越えるのでしょうか。

体温調節。人間や馬は発汗により体温を調節しますが、犬や猫はほとんど足の裏くらいの発汗で、発汗による体温調節は期待しにくいと思われます。 では暑いとき、犬や猫はどのような生活パターンをとるのでしょうか。外にいる犬は、涼しい木陰で体表面積をできるだけ広げ静かにしていたり、 土を掘って冷たい土の中へ体を埋めこみ、体を冷やしたりしています。 つまり体表面積を広くし放熱し、体温を下げようとします。 また皮膚のうすいところ、舌、耳、鼻、などでは血管を冷たい外気温にさらし、放熱をします。 でも犬や猫にとって最も有効な耐暑法は、多呼吸による気管からの放熱と言われています。だから暑いと犬や猫は口を開けてハアハアするのですね。 また唾液分泌も体温調節に使われています。特に猫は、唾液を体につけ(体をなめて)、対表面を濡らし、蒸発によって放熱します。

それでもかなわない時は水浴びをして体を冷やす、また、全身に水をかぶり、その気化熱により体温を下げようとします。

今年の夏は猛暑が予想されているようです。外出時の車内は大変な暑さになります。
「少しだから車の中にいてね」は、熱射病という大変な悲劇をうむことになります。
また家の中に置いてお出かけになる時は、風通しのよいようにしておくとか、冷房をかけて出かけるようなお気遣いが必要だとおもいます。

犬では41.7℃、猫では43.4℃が致死体温だと言われています。それ以上の外気温が長く続くと動物たちにはなす術がありません。人間が早く気付いて対処してあげなければなりません。

もし熱射病、熱中症になったと思われた時は、すみやかに水浴をさせるとか、冷水をかけるとか、クーラー、扇風機を使って体を冷やし、急いでお近くの動物病院へ行かれ、手当てをしてもらって下さい。

人間も動物も快適にこの夏を過ごしたいものですね。
バニラちゃんもミルクちゃんも元気で過ごしてくれることをお祈りします。

フィラリアの血液検査で陽性と出てしまった。
これは少し厄介なことになりましたね。

陽性ということは、フィラリアに感染してしまったということですが、一旦心臓や肺動脈内にフィラリアが寄生してしまいますと、回虫や条虫などお腹の中の寄生虫のように、薬で退治して糞便と一緒に体外へ出すという駆除の仕方はできません。
駆除ができたとしても死んだ虫は体外へ出すことが出来ず、肺に流されて肺の末梢で詰まってしまいます。
詰まった先には血液が流れず、その先の組織は死んでしまうということになり、肺の機能が低下してしまうことになります。

そればかりでなくフィラリアが元気なときには、心臓や肺動脈の寄生部位を移動しますので、肺動脈の血管を傷つけることで血栓ができやすくなったり、心臓のポンプの役目を担っている弁(三尖弁)にからまり、弁の働きを悪くする。
つまり心臓の機能を低下させてしまう心臓病を引き起こしてしまいます。

現在ではご質問の中にもありますように非常に良い薬ができており、それを飲ませることにより確実な予防が出来るようになっています。

ではここでフィラリア症について簡単におさらいをしてみましょう。
フィラリア症というのは犬糸状虫症とも言われ、約15~30センチメートルの長さの細い糸のような虫が心臓や肺動脈に寄生することにより心肺機能が低下し、体の各臓器に色々な悪い影響を与える恐ろしい病気です。
フィラリアは、感染している犬の体で繁殖し、子虫をたくさん生みます。
その生まれた子虫は、蚊が出てくる時間帯を察知するかのように、蚊が出没する頃に体表に近い所に移動し、蚊が感染犬の血を吸った時に一緒に蚊に吸われて蚊の体内に入り込みます。
蚊の体の中で成長した子虫は、蚊が他の犬を刺し吸血しようとすると時、今度は刺された犬の体に入り込み成長を続けます。
その後、感染した犬の体の中を移動し、最終的に肺動脈や右心房、右心室に寄生します。

感染したときの症状はといいますと、少数の寄生や慢性経過をたどった場合、あまり症状が顕著に現れないこともありますが、元気がない、食欲が落ちる、栄養状態の悪化、被毛の質が低下するなどが見られます。
また重症になると、咳をしたり、呼吸が苦しそうな様子を見せたり、腹水がたまるなどの症状を現わし、死に至るということが多いようです。

では一旦感染したらどうしようもないのか?そうではありません。
感染しているのも知らず放置した場合は、助けることもできないかもしれませんが、感染初期であれば、砒素という薬を使って寄生しているフィラリアを駆虫することができます。
しかし前述しましたように虫体が死んだ場合、行く先は肺の末梢血管になりますから、たくさん寄生していた場合、心肺機能に影響が出て死に至る場合もあります。
その他に心臓手術により心臓から虫体を取り出すこともあります。これも危険を伴うことが考えられます。

このようにフィラリアが一旦体の中に入ってしまうと、非常に厄介で命の危険にもさらされるということをご承知いただきたいと思います。
前にも述べていますように、フィラリア症にかからないようにするために、現在はとても良い薬があります。
蚊が出始めて一ヶ月目から蚊が出終わって一ヶ月の間、月一回の予防薬を飲ませるだけで完全な予防ができます。
読者の皆様も月一回の投薬をお忘れにならないよう、愛犬の健康を守ってあげて下さい。

腎不全の話をする前にまず、腎臓とはどんな働きをしているのか簡単に見てみましょう。
腎臓は、体内の代謝により生成された血液中の不要物(老廃物)をろ過して排出します。そして不要物だけれなく、余分な水分や塩分も尿中に排出し、体液の組織を常に一定に保つ役割を持っています。

では腎不全について見てみましょう。

腎不全とは前述のような腎臓の機能が衰え、体に必要な水分を再吸収する働きが弱まり、体の中の水分を捨て過ぎてしまって脱水症状を起こしたり、血液中に毒性のある不要物がたまって障害を起こしたりすることを言います。
この腎不全には急性と慢性があり、急性腎不全は慢性腎不全と違いそう頻繁に見られるものではなく、通常若い猫に見られます。細菌やウイルスあるいは毒物が原因となり迅速な治療が必要となります。
急性腎不全を発症した場合、あるデータでは60%近くが死んでしまい、命を取りとめても慢性腎不全に移行することが多いと言われるくらい怖い病気です。

今回のご質問の腎不全は慢性腎不全のことと思われますが、この慢性腎不全は、老齢猫(犬は猫ほどではありませんが、同じく加齢による腎不全は起こります。)に最もよく見られる病気です。

原因はなんでしょうか?

慢性腎不全の原因はまだよくわっていませんが、急性腎不全と同じように腎臓に障害をあたえるさまざまな原因が、長年にわたって少しずつ腎臓の組織を壊し、ある一定のレベルを超えると急速に腎不全が進行すると言われています。ではどういう症状がでるのでしょうか?
見た目はとても元気だけれども飲水量が増える、それにつれ排尿量が増える。そのうち嘔吐することが多くなる。口臭があり、口腔内に口内炎や潰瘍ができる。こういう症状があり、7、8歳以上の猫ちゃんであれば、要注意です。
早めにかかりつけの動物病院でご相談ください。

不幸にも慢性腎不全になってしまったら、どのように対処してあげれば良いでしょうか?

腎臓は残念ながら一度障害を受けて壊れてしまった部分は、元に戻りません。
そして壊れた部分が行っていた働きを、正常な部分が請け負うことになり、正常な部分の負担が増えてしまいます。ですから、腎不全の場合は正常な部分に負担をかけずにその機能を維持させることが大切です。

そのためには腎臓への負担を掛けない食生活(リンやたんぱく質は腎不全を悪化させると言われている。)が必要です。好きなものだけをあげていますと悪化の速度が速まります。さまざまな療法食も販売されていますので、かかりつけの病院でよくご相談なさってください。この他、気をつけることは新鮮な水を常に用意する、定期的に体重をはかるなど、日常の変化をよく観察してあげることが大切です。
あなたの細やかなケアで質の良い楽しい生活を守ってあげてください。