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今回のご質問は、我々動物に関係する人間にとっては、とても大切な事であり、なおかつ今後益々深刻な問題となってくるものと思います。

お答えを先に申し上げますと、残念ながら現時点では、その犬が寿命を全うするまで面倒を見てくれる公的機関はありません。トピックスとして、善意で面倒を見てくださる方がいるなど、マスコミ等で時々見ることはありますがまれです。また退役した盲導犬を、ボランティア活動で面倒をみておられるグループもありますが、これもほんの一部に過ぎません。

愛犬との二人三脚の生活に終止符を打たねばならない。後髪を引かれるような思いでおられることと思います。
予算が十分にある方は、ペットシッターなど、預かりを職業とされている方と長期の契約をされて、時々会いたいときに会いに行っておられる方もいらっしゃいます。またつい先日も、独居老人の方が、自分が亡くなったときは遺産を総て、この犬のために使ってくれと言い残してお亡くなりになられましたが、法定相談人がおられて遺産は私のものだと、係争中であるとの記事を読んだこともあります。

これらの記事を読むにつれ欧米での動物、いわゆるペットの待遇は、日本と違いとても手厚い保護を受けているように思います。
先刻の話とは反対に、多くの方が全財産をペットに遺産相続をさせているとか、伴侶動物のいざという時のために、その動物の名前で預金もできているとか。またボランティアが、飼い主のいない犬や描、捨てられた犬や猫をシェルターという施設で面倒を見、しつけをして里親を捜し、貰っていただくという活動がなされています。その一環として老齢犬をお世話している所もあるようです。もちろん無料です。その費用は募金、献金にてまかなっておられるようです。
欧米は社会貢献、ボランティアには、こぞって資金提供をしたり労働力の提供をしたり、日本の事情とは少し違うようです。日本も早くそういう気運が熟成されるとよいと思います。

私の病院でも五十~六十代の方は時々「もうこの子で終わりだね。飼いたいけど私の方が先に逝っちゃうから」とお話されます。
年をとってからの動物との生活は、犬や猫をはじめペット動物の世話をすることで規則正しい生活ができたり、その動物を介して人とのつながりも広がります。また愛情を与えると、ちゃんと嬉しそうに答えてくれ心を和ませてくれます。こんな可愛い動物たちとの生活を断念せねばならないというのはとても残念なことです。
「新しい伴侶動物はもっとあなたに生きる力を与えてくれますよ。思い切ってチャレンジしてみませんか」と言いたいのですが、もし万が一のことを考えた場合、おすすめする勇気がでません。

これから私も含め団塊の世代の方たちもそういう年齢に達します。
この間題を皆さまどう考えられますでしょうか。反対に私の方から皆さまにご意見、アドバイスをいただきたいと思います。そして機会がありましたら意見交換できるといいですね。ご意見お待ちしております。

一つの朗報として、最近、獣医師とボランティアがこの問題を考え、動物を飼っておられるお年寄りの方たちへの支援をしようという団体ができました。
その団体は「VESENA」といい、お年寄りの飼い主さんをサポートしようと動き始めています。
>>VESENAホームページ

フィラリアの血液検査で陽性と出てしまった。
これは少し厄介なことになりましたね。

陽性ということは、フィラリアに感染してしまったということですが、一旦心臓や肺動脈内にフィラリアが寄生してしまいますと、回虫や条虫などお腹の中の寄生虫のように、薬で退治して糞便と一緒に体外へ出すという駆除の仕方はできません。
駆除ができたとしても死んだ虫は体外へ出すことが出来ず、肺に流されて肺の末梢で詰まってしまいます。
詰まった先には血液が流れず、その先の組織は死んでしまうということになり、肺の機能が低下してしまうことになります。

そればかりでなくフィラリアが元気なときには、心臓や肺動脈の寄生部位を移動しますので、肺動脈の血管を傷つけることで血栓ができやすくなったり、心臓のポンプの役目を担っている弁(三尖弁)にからまり、弁の働きを悪くする。
つまり心臓の機能を低下させてしまう心臓病を引き起こしてしまいます。

現在ではご質問の中にもありますように非常に良い薬ができており、それを飲ませることにより確実な予防が出来るようになっています。

ではここでフィラリア症について簡単におさらいをしてみましょう。
フィラリア症というのは犬糸状虫症とも言われ、約15~30センチメートルの長さの細い糸のような虫が心臓や肺動脈に寄生することにより心肺機能が低下し、体の各臓器に色々な悪い影響を与える恐ろしい病気です。
フィラリアは、感染している犬の体で繁殖し、子虫をたくさん生みます。
その生まれた子虫は、蚊が出てくる時間帯を察知するかのように、蚊が出没する頃に体表に近い所に移動し、蚊が感染犬の血を吸った時に一緒に蚊に吸われて蚊の体内に入り込みます。
蚊の体の中で成長した子虫は、蚊が他の犬を刺し吸血しようとすると時、今度は刺された犬の体に入り込み成長を続けます。
その後、感染した犬の体の中を移動し、最終的に肺動脈や右心房、右心室に寄生します。

感染したときの症状はといいますと、少数の寄生や慢性経過をたどった場合、あまり症状が顕著に現れないこともありますが、元気がない、食欲が落ちる、栄養状態の悪化、被毛の質が低下するなどが見られます。
また重症になると、咳をしたり、呼吸が苦しそうな様子を見せたり、腹水がたまるなどの症状を現わし、死に至るということが多いようです。

では一旦感染したらどうしようもないのか?そうではありません。
感染しているのも知らず放置した場合は、助けることもできないかもしれませんが、感染初期であれば、砒素という薬を使って寄生しているフィラリアを駆虫することができます。
しかし前述しましたように虫体が死んだ場合、行く先は肺の末梢血管になりますから、たくさん寄生していた場合、心肺機能に影響が出て死に至る場合もあります。
その他に心臓手術により心臓から虫体を取り出すこともあります。これも危険を伴うことが考えられます。

このようにフィラリアが一旦体の中に入ってしまうと、非常に厄介で命の危険にもさらされるということをご承知いただきたいと思います。
前にも述べていますように、フィラリア症にかからないようにするために、現在はとても良い薬があります。
蚊が出始めて一ヶ月目から蚊が出終わって一ヶ月の間、月一回の予防薬を飲ませるだけで完全な予防ができます。
読者の皆様も月一回の投薬をお忘れにならないよう、愛犬の健康を守ってあげて下さい。